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組織戦略とは?

 筆者は1章で人間が意識無意識に行う戦略を異性(資源)への関心の欲求と異性を所有する欲求の2つのベクトルによって、タカ派戦略、ハト派戦略、ブルジョワ戦略、聖者戦略の4つに分類しましたが、この4つの戦略は主に資源を手に入れるという点で国家などという単位でのコミュニティ(共同体組織)によってそれぞれの戦略グループに細分され、運営、実行されています。
 簡単に言ってしまえば組織戦略とは職業で、組織戦略を行っている人(つまりは職業人)は、例えば金銭といった資源を手に入れる為に各組織ごとの仕事(つまりは戦略です)を実行します。
 この組織戦略はそれぞれタカ派戦略グループ、ハト派戦略グループ、ブルジョワ戦略グループ、聖者戦略グループの4つと、さらに各々のグループ内でのタカ、ハト、ブルジョワ、聖者戦略に特化した4×4の16戦略に分類することが出来るのです。
  それでは次項のマトリックスを御覧下さい。

  この図表だけではややわかりづらいかもしれませんが、これから実際に16の組織戦略の説明を行い、その具体例について示していきますので御覧下さい。


タカ派戦略グループ内戦略

  タカ派戦略グループ内戦略とは、相手を傷つけてでも自分たちの必要とする資源を手に入れるというタカ派戦略を実行するグループの戦略です。
  このグループは更に、そのグループ内での役割分担などでタカ派戦略グループ内タカ派戦略、タカ派戦略グループ内ハト派戦略、タカ派戦略グループ内ブルジョワ戦略、タカ派戦略グループ内聖者戦略の4つに分類することができます。

タカ派戦略グループ内タカ派戦略

 タカ派戦略グループ内タカ派戦略とは、相手を傷つけてでも自分たちの必要とする資源を手に入れるというタカ派戦略を実行するグループのなかで実際にそのタカ派戦略を実行する組織戦略です。
  そのわかりやすい例としては軍隊が挙げられるでしょう。軍隊は、国家というグループで、他国と戦争して領土や資源を手に入れる為の公的な武装集団(タカ派戦略グループ)です。
  軍隊に入隊した人は武器や軍用機の取り扱いを学び、戦いのプロとなります。
  彼らは国家の国民の資源を手に入れる為に相対する他国を傷つけてでも戦争に勝利し国家の利益を獲得する為に戦う(タカ派戦略)のです。
  一方で規模は様々ですが、紛争などが起こった際頻繁に使われる用語であるテロリストという集団も、タカ派戦略グループ内タカ派戦略を行使していると考えて差し支えないでしょう。
  テロリストは民族集団というグループに所属し、異なる民族で政治経済など(資源)を巡って争いが発生した際に、自らが戦士となって(タカ派戦略グループ)相手となる宗教集団や民族集団を傷つけてでも争いに勝利しようとします(タカ派戦略)。
 
また、暴力団といったような組織で(タカ派戦略グループ)、実際に暴力団に敵対する勢力を殺傷するため(タカ派戦略)に存在する鉄砲玉といったような役割もタカ派戦略グループ内タカ派戦略であるといえます。

タカ派戦略グループ内ハト派戦略

 日本では馴染みがありませんが、タカ派戦略グループ内ハト派戦略をさす用語が存在します。それは、chicken hawk(チキンホークあるいはタカ派チキン)という言葉です。この言葉は、「臆病な強硬派」を意味します。
 タカ派チキンは米国で用いられる政治の俗語で戦争など軍事活動に大いに賛成しているが従軍して戦地に赴いたことがない政治家、官僚、評論家等を指します。チキンとは俗語で臆病をいい、タカ派の主張をしているが実は自分は戦地に行きたくない腰抜けという揶揄を含んだ意味で表現されるのです。

  つまりは、武力で資源を入手するという手段を擁護・賛成する、好戦的軍事政策集団や軍事評論家等(タカ派戦略グループ)に属しているのですが、自らは一切そのような行為を実行しない(ハト派戦略)人物や行動をタカ派チキンと定義しています。
 それ以外にも、例えば熱心な戦争支持者でありながら(タカ派戦略グループ)、軍隊に入隊しようとはせず、自ら戦地に赴こうとはしない(ハト派戦略)国民や、暴力団やマフィア、果ては愚連隊や暴走族のような暴力組織(タカ派グループ)に所属していながら、自らは一切暴力行為を行わない(ハト派戦略)という組織員もタカ派戦略グループ内ハト派戦略を行っていると言えるでしょう。

  また、最近社会問題の主要なテーマの一つとなりつつある『いじめ』の背景にはこのような、イジメや攻撃を容認、賛成するいじめグループ(タカ派グループ)に所属していながら、直接は『いじめ』や攻撃行為を行わない(ハト派戦略)タカ派チキンの存在が重要な役割を占めていると推測されます。

タカ派戦略グループ内ブルジョワ戦略

 タカ派戦略グループ内ブルジョワ戦略とは、相手を傷つけてでも自分たちの必要とする資源を手に入れるというタカ派戦略を実行するグループのなかで資源を増やそうとするブルジョワ戦略を実行するグループです。
  その代表的な例としては傭兵が挙げられるでしょう。タカ派戦略グループ内タカ派戦略である軍隊は、自らが所属するグループの為資源を手に入れるべく相手国などと争いを行いますが、一方で傭兵達はあくまでも自らの金銭を増やす為に(ブルジョワ戦略)軍隊などに所属します(タカ派戦略グループ)。
 そして、傭兵と同様に金銭を増やす為にして殺人などの行為を職業として行う殺し屋というような人々もこのグループに位置付けることができそうです。
  スポーツチームに所属して他のチームと対戦し、観客からの収入で生計を立てるプロスポーツもタカ派戦略グループ内ブルジョワ戦略と言えそうです。
 また、趣旨は異なりますが武器商人もタカ派戦略グループ内ブルジョワ戦略を行っていると言えるでしょう。彼らは国の軍隊や軍事組織を相手にして(タカ派戦略グループ)人を殺傷する武器を取引しますが、それは武器商人が誰かを相手に戦って資源を勝ち取るためではなく、国の軍隊や軍事組織を相手にした商売で金銭を増やすためです(ブルジョワ戦略)。

タカ派戦略グループ内聖者戦略

 タカ派戦略グループ内聖者戦略とは、相手を傷つけてでも自分たちの必要とする資源を手に入れるというタカ派戦略グループに所属しながら、資源への興味や所有の欲求を制御するという聖者戦略を行うグループです。
  この例としてまず第一に挙げられるのが、日本で戦争中に行われた特攻であるといえるでしょう。
  タカ派戦略というのは、その戦略を行う本人が争いに勝利して資源を手に入れようとして行われますが、この特攻は自らの死がほぼ確定した自己犠牲(聖者戦略)の戦いであり、軍隊に所属して(タカ派戦略グループ)敵を攻撃し打ち倒す為と同時に、ある意味で国家宗教の色彩を帯びていました(特攻隊の名称が神風という名前を冠していることや、その戦死者が英霊として祀られていることからも明らかです)。
  特攻と同様に民族紛争などの際、軍事組織などで爆弾などを自ら抱えて敵地に侵入して自爆するなどの手段で度々行われる、自爆テロもタカ派戦略グループ内聖者戦略といえそうです。  そして、これは先に挙げた特攻や自爆テロとは趣が異なりますが、軍隊などの本来タカ派戦略を行う為に創設されたグループが災害などの際に行う救援活動(利他行為と言う聖者戦略)もタカ派戦略グループ内聖者戦略と定義づけることができるでしょう。

ハト派戦略グループ内戦略

 ハト派戦略グループ内戦略とは、グループに属し、平和や協調を旨として、争うことなく資源を手に入れようとするグループの戦略です。
  このグループはハト派戦略グループ内タカ派戦略、ハト派戦略グループ内ハト派戦略、ハト派戦略グループ内ブルジョワ戦略、ハト派戦略グループ内聖者戦略の4つに分類することができます。

ハト派戦略グループ内タカ派戦略

 ハト派戦略グループ内タカ派戦略は、争うことなく資源を皆で手に入れようとするハト派戦略グループ内でタカ派戦略を主に行うという組織戦略です。  そしてその代表とも言えるのが警察です。
  警察は国家という組織に所属し、誰かから何かを奪い取る為でなく、国家という組織の治安や秩序を守るという主旨で(ハト派戦略グループ)武器を所持し、治安や秩序を脅かす犯罪を取り締まります。もちろん、時には実際に戦うこともあります(タカ派戦略)。
  同様に、特定の施設や建物、現金輸送や時には特定人物のボディーガードをも行う警備という仕事もハト派戦略グループ内タカ派戦略であるといえます。
  更に、これは日本独自ですが、『日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する』と戦争を行わないと憲法第9条で約束している日本における国家防衛組織である自衛隊は、一般国の軍隊のように他国への侵略行為を一切行わないという点で、軍隊が分類されるタカ派グループ戦略内タカ派戦略でなく、ハト派戦略グループ内タカ派戦略に分類されるといえます。
  更に世界的視野では、紛争などで著しく治安が悪化している地域に各国の軍隊が派遣される国連平和維持活動(PKO)が当てはまるでしょう。彼らは国家の平和を守るという目標で設立された国際連合の決議の基で、国家の治安を維持し、人々を守る為に派遣されていますが、最初に例として挙げた警察と同様に武器を装備し、派遣先の国民や自らの危険を守る為には武力を行使する権利を有しています。

ハト派戦略グループ内ハト派戦略

 ハト派戦略グループ内ハト派戦略とは、対話による解決や協調を基調としたハト派戦略グループ内にてのハト派戦略です。
  家族や友人同士の和やかな付き合いや、更には国家間や民族間での様々な友好親善活動もハト派戦略グループ内ハト派戦略と言えるでしょう。
  世界的な視野では国家間の平和と安全を維持する為に設立され、資金なども各国が互いに持ち寄って運営を行っている国際連合(いわゆる国連)がハト派戦略グループ内ハト派戦略を行う組織に当てはまるでしょう。
  身近な例でいいますと、近所同士での町内会や互助会、老人会などの相互扶助のコミュニティもハト派戦略グループ内ハト派戦略と言えそうです。
  更に保険や年金など、皆で金銭という資源を共有して、有事や老後に分け与える制度や組織もハト派戦略グループ内ハト派戦略といえそうです。

ハト派戦略グループ内ブルジョワ戦略

 ハト派戦略グループ内ブルジョワ戦略とは、対話による解決や協調を基調としたハト派戦略グループ内にて自らの資源を増やすブルジョワ戦略を行う組織戦略です。
  その例としては民主主義における様々な政治活動が挙げられるでしょう。
  政治とは、その国や地域における共同体組織全体の利益を図る為に(ハト派戦略)代表者を選出し、組織の運営にあたりますが、そこで選ばれた人にはその組織全体で手に入れた税金などが給与として支払われる為、職業としての意味も持ち合わせています(ブルジョワ戦略)。 国会議員であれば全国の各選挙区や政党ごとの比例選挙区から議員が選ばれ、法案の立案などの国政運営にあたり、都道府県議員であれば都道府県政の運営、市町村議員であれば、各市町村政治の運営を行います。
 これらの人々はそもそもはそれぞれの共同体組織の利益を図ろうというハト派戦略グループの所属なのですが、その結果職務として政治に携わるというブルジョワ戦略を行っている為、ハト派戦略グループ内ブルジョワ戦略に分類することが出来るでしょう。
  更に、様々な組織における派閥作りなども、他者と友好関係を行うという行為でありながら、その背後には味方を増やすことで自らを利そうという何らかの思惟が働いているという点でハト派戦略グループ内ブルジョワ戦略と言えそうです。

ハト派戦略グループ内聖者戦略

 ハト派戦略グループ内聖者戦略は有効や協調を基調としたハト派戦略グループで自らの利益を求めず利他行為を行うという聖者戦略を行う組織戦略です。
 ハト派戦略グループ内聖者戦略の例として最も適しているのは様々な社会奉仕です。
 国家単位でいえば、日本の青年海外協力隊が当てはまります。青年海外協力隊は開発発展途上国の援助や協力を行う日本の組織で、その隊員は各国に派遣されています。彼らには一応給与が支払われますが、それは微々たるもので、発展途上国を救おうという奉仕精神から彼らは発展途上国の援助を行います。
 世界では、このような発展途上国の援助を組織的に統括する国連開発計画(UNDP)が国際連合の一組織として存在しています。
 そして私達に身近な場所でもハト派戦略グループ内聖者戦略は行われており、例えば地域における民生委員がこれに当てはまるでしょう。
 彼らは近隣の住民たちの実態を把握して相談役となったり生活支援を行ったり地域の調整役となったりします。彼らには給料がなく、事実上の完全な地域ボランティアです。
 民生委員以外にも地域住民が自発的に行う近隣の清掃などの地域ボランティアもハト派戦略グループ内聖者戦略と言えそうです。
  更に心身の不調などの原因で収入を得ることが難しくなった人々に金銭を分け与えて生活を保障する、いわゆる生活保護などの社会保障制度もハト派戦略グループ内聖者戦略に分類できそうです。

ブルジョワ戦略グループ内戦略

 ブルジョワ戦略グループ内戦略は、自らの資源を増やそうとするブルジョワ戦略を行うグループの戦略です。
  このグループはブルジョワ戦略グループ内タカ派戦略、ブルジョワ戦略グループ内ハト派戦略、ブルジョワ戦略グループ内ブルジョワ戦略、ブルジョワ戦略グループ内聖者戦略の4つに分類することが出来ます。

ブルジョワ戦略グループ内タカ派戦略

 ブルジョワ戦略グループ内タカ派戦略とは、所有を増やす行為を専門で行うブルジョワ戦略グループにて、欲しい資源は何としてでも手に入れようとする、すなわちタカ派戦略を行う戦略です。
 企業ののっとりを狙って行われる敵対的買収なんかがいい例です。
 投資はもともとは独立経営を行おうという経営者に投資家が金銭を貸与することで、経営者は事業を成り立たせ、投資家は投資分の配当を得るという相互利益性のある行為ですが、敵対的買収においては一定の株主比率を手に入れて企業の経営陣を追い出し、実質上の支配権を握ろうとして投資が行われます。
  この敵対的買収に関しては対抗策として、第三者の投資家に援助としての投資を行ってもらうホワイトナイトや、安価で新株を発行して敵対的買収を行おうとする投資家の持ち株比率を下げるポイズンピルなどの戦略があり、さながらマネーゲームの合戦絵巻のようです。
  そして様々な先物や為替など価値変動する商品の短期取引で利益を上げようとする投機も、例えば原油価格などの高騰で人々に迷惑が掛かるのをお構いなしに(タカ派戦略)マネーゲームのなかで自らの利益を追求するという点でブルジョワ戦略グループ内タカ派戦略と定義づけることが出来るでしょう。
 また、金銭と引き換えに女性や男性と性行為を行うというセックスビジネスの買い手が異性に金銭を払って性交渉を行うことを買春と言いますが、これも援助交際等の問題で一時期問題となりました。
  状況にもよりますが、親の借金などが原因で強引に性風俗産業に身売りされてしまうケースが存在する以上、買春という行為もブルジョワ戦略グループ内タカ派戦略と言えるでしょう。

ブルジョワ戦略グループ内ハト派戦略

 ブルジョワ戦略グループ内ハト派戦略とは、金銭等の所有を増やす行為を目標としたグループ(ブルジョワ戦略グループ)に属し、対話による解決や強調を基調としたハト派戦略を行う組織戦略です。
 通常人間が行う働くという行為の殆どはこちらに分類されると言ってもいいのではないでしょうか。
 公務員やサラリーマン、パートやアルバイトなどの職に就く人々は行政を行う省庁や自治体、様々な企業で協力しながら様々な経済活動を行い所得を手に入れます。

ブルジョワ戦略グループ内ブルジョワ戦略

 ブルジョワ戦略グループ内ブルジョワ戦略とは自らの資源を増やそうとするブルジョワ戦略グループ内で実際にブルジョワ戦略を行う組織戦略です。
  筆者はブルジョワ戦略を説明する際に金を貸すことを例に挙げたように、銀行や貸金業などの金融業がブルジョワ戦略グループ内ブルジョワ戦略に当てはまるでしょう。
  彼らは企業や個人などを取引相手として金を貸し、その利息を収入としています。
  さらに投資行為もブルジョワ戦略グループ内ブルジョワ戦略と言えます。投資家は企業に営業の為の資金を融資し、企業は自らの営業成績に合わせて投資家に配当金を分配します。

ブルジョワ戦略グループ内聖者戦略

 ブルジョワ戦略グループ内聖者戦略とは、資源を増やそうとするブルジョワ戦略グループに所属し、自らの利益を省みない利他行為を行うという組織戦略です。
 簡単な例が金銭等の寄付や寄贈です。  ブルジョワ戦略は金銭などの自らの資源を増やそうとする戦略ですが、当然その金銭は誰もが欲しがっている資源である為、金銭をたくさん所有していると、危険にあったり他者に憎まれたりしてしまう可能性がありますが、寄付や寄贈行為を行うことで周囲の尊敬や協調関係を手に入れることが出来ます。
 様々な慈善行為を行う公益性のある財団を設立することもブルジョワ戦略グループ内聖者戦略に分類できます。 
 実在の例としては、事業に成功して鉄鋼王となった後、慈善活動を行ったカーネギーや、ノーベル賞を設立したノーベル等が挙げられます。


聖者戦略グループ内戦略

 聖者戦略グループ内戦略とは資源への欲求を抑制して禁欲行為や利他行為を行う聖者戦略を遂行するグループの戦略です。
 このグループは聖者戦略グループ内タカ派戦略、聖者戦略グループ内ハト派戦略、聖者戦略グループ内ブルジョワ戦略、聖者戦略グループ内聖者戦略の4つに分類することが出来ます。

聖者戦略グループ内タカ派戦略

 聖者戦略グループ内タカ派戦略とは、聖者戦略(宗教集団、ボランティアグループ等)グループ内にて闘争と勝利を目標とするタカ派戦略を行う戦術です。
 その例としては十字軍が挙げられるでしょう。十字軍はキリスト教が聖地イスラム教を奪回する為に編成された軍隊です。ですが、今では十字軍の行った戦争は侵略戦争であると認知されています。
 一方十字軍の敵国だったイスラム教側も聖戦(ジ・ハード)と呼んで宗教戦争を肯定しました。ジ・ハードを行ったイスラム側も神の為の正義と称して、十字軍と戦ったのです。
 一方仏教などでも、戦国時代には寺社勢力が独自の武装集団を保持しており、僧兵と呼ばれていました。
  現在でも宗教紛争が起こっている地域では、一方の宗教側に加担し戦士となっている人々がいますが、彼らも聖者戦略グループ内タカ派戦略を行っているといえます。
  また、カルト教団などが行う宗教テロも聖者戦略グループ内タカ派戦略に分類することができそうです。

聖者戦略グループ内ハト派戦略

 聖者戦略グループ内ハト派戦略とは、利他行為を行う聖者戦略グループ内にて、協力や対話を基調としたハト派戦略を行う行動です。
 様々な慈善団体などでの活動や、ごく一般では信仰と呼ばれているような様々な宗教行為が聖者戦略グループ内ハト派戦略に当てはまります。

聖者戦略グループ内ブルジョワ戦略

 聖者戦略グループ内ブルジョワ戦略とは、利他行為を行う聖者戦略グループ内にて、自らの資源を増やそうとするブルジョワ戦略を行う戦略です。
 その例としては、さまざまな宗教グループの勧誘です。本来神を信じる等の宗教行為は自らの気持ちの内でおこなうべきではありますが、それは敷衍し、同じ志の人間を増やそうとする行為は普遍的に行われています。
 また、宗教組織や慈善組織は本来は善行や自己修養の為に運営されることが多いのですが、金銭などの資源を増やそうとして(ブルジョワ戦略)行われていることも少なからずあります。
 例えば、本来なら修養を重ね、世間に人としての在り方を示すはずの仏教僧が外車を乗り回し、歓楽街で売春にふけるなどの行為が少なからず存在しています。
  それを皮肉ったのが坊主丸儲けという諺なのです。
  坊主という言葉で思い出しましたが、お坊さんの収入形態が聖者戦略の資源の手にいれ方を象徴していると言っていいでしょう。
  お坊さんは、葬式などに呼ばれた後、代金をもらうのではなく、受け取った金額はお布施と呼ばれています。これは、お坊さんの行った経を挙げるという仏教的行為(聖者戦略)に対してそれを受けた檀家さんが感謝の気持ちとしてお坊さんに感謝の気持ちを表す、あるいは生活の援助を行うという無償の行為に対する無償の行為という前提に成り立っています。
 ところで、聖者戦略グループ内ブルジョワ戦略が行き過ぎると世間一般でいうところの霊感商法となり、先祖の祟りを鎮めるためのお札や、運を上げる為の高価な壺などが半ば押し売りや催眠的な商法で売られて問題となっています。
  とは言え、刑事訴訟の対象としては該当しづらいため、依然として解決しづらい問題の一つです。

聖者戦略グループ内聖者戦略

 自らの欲求を抑制し、利他行為を行う聖者戦略グループ内で同様の聖者戦略を行う組織戦略です。
 この分類に当てはまる代表的な例がキリスト教の開祖であるイエス=キリストですが、キリストは全人類への愛を引き換えにして人間の罰を償おうと自らが十字架に磔になりました。
  そんなキリストを讃えキリスト教が現在世に広まっているのですが、キリストが実際実在したとして、キリストが生きているうちはこんな風にキリスト教は広まらなかったでしょう。何故なら、生きているということは、生殖行動等のあらゆる選択肢が残されていて、十分に信頼されないからです。
 1章でも述べましたが、宗教の教祖が信者とSEXするなんて事例は世に腐るほどあります。 当然ながら生命としての欲求を我慢するため(聖者戦略)、生きているうちには全く報われず、死んでから報われるかどうかも定かではありません。実際キリストのような人間はキリスト以外にひょっとすると結構いたのかもしれません。しかし、それが全て報われ、尊敬されているかというと確信が持てません。
  そういう点では聖者戦略グループ内聖者戦略は非常に自己犠牲的でストイックな戦略だと言えます。
 ちなみに、仏教でも自らの死で修業を締めくくろうとする即身仏という苦行が以前に行われており、彼らは死後ミイラとなって所属する寺社などに奉られ、尊敬や信仰の対象となっています。彼らの行為も聖者戦略グループ内聖者戦略といえるでしょう。この即身仏という宗教行為は日本で行われていました。
  また、今でもキリスト教等の宗教ではある位以上の聖職者は独身を義務付けられています。彼らは宗教的職務に就く務めとして己の性欲を禁じているのです。

組織戦略のまとめ

 今回筆者は各組織戦略の説明を行い、世界で今行われている様々な職業や行為を分類してまいりましたが、その分類については判断が難しく、全ての戦略はあいまいな面があります。

 例えば筆者はタカ派戦略グループ内ブルジョワ戦略の例として武器商人を挙げましたが、武器商人は戦争といったような観点からするとタカ派戦略グループ内ブルジョワ戦略ですが、商業取引の視点からすれば、ブルジョワ戦略グループ内タカ派戦略ともいえます。

 同様にタカ派戦略グループ内ブルジョワ戦略の例としたプロスポーツにしても、所属するスポーツチームをタカ派戦略グループだとするならばタカ派戦略グループ内ブルジョワ戦略なのですが、スポーツチームをブルジョワ戦略グループだと考えればブルジョワ戦略グループ内タカ派戦略となります。

 マトリックスを見て頂ければお分かりだと思いますが、タカ派戦略グループ内ブルジョワ戦略とブルジョワ戦略グループ内タカ派戦略の例のように〇〇戦略グループ内□□と□□戦略グループ内〇〇戦略は類似した、あるいは共通した点が存在すると言って差し支えないでしょう。

 また、聖者戦略グループ内ハト派戦略の例として挙げた宗教活動の例では、その宗教活動が信者や資金を増やすための活動になった際は聖者戦略グループ内ブルジョワ戦略となりますし、行為者が純粋な自己犠牲や自己抑制を行っている場合には聖者戦略グループ内聖者戦略と分類するのが適切でしょう。

  更にブルジョワ戦略の金を貸すという行為は、通常ならブルジョワ戦略グループ内ブルジョワ戦略ですが、暴利をむさぼり人を破滅させるような高利貸しはブルジョワ戦略グループ内タカ派戦略と言えます。

 このように各戦略は時と場合によって様々な流動性が存在していますが、その際の特徴として流動性はいずれも隣接する戦略との間に発生します。

  各戦略の分類した例を図表化した表を作成しましたので比較してみると興味深い結果が得られるでしょう。

 また、様々なシチュエーションで行われる人々の営みをあなたなりに分類してみるのも有意義であろうと思います。

  冷静な戦略的思考が獲得されること請け合いです。


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