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Contents

構成 前書き
1章 2章
3章 4章
5章 6章
コラム集 後書き

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桃井富範個人のページ

4つの進化戦略

 さて、それでは人生に役立つゲーム理論の説明に入ります。 人間が普段意識・無意識に行っている戦略はズバリ4つに分類できます(1)。その4つの戦略とは何かというと、タカ派戦略、ハト派戦略、ブルジョワ戦略、聖者戦略です。
 以上の4つの戦略は、つまり男性女性を問わず、人間が生存するために必要な水や食料、土地や燃料、金銭などの資源を得るために、そして子孫繁栄のため、つまり恋愛で異性(異性は子供を産む為、そして子供を育てる為の重要な資源です)を手に入れる為、あるいは自分がより異性にモテる為に、あるいはゲットした異性をとられないようにする為に、それぞれの人間たちが意識・無意識に行う戦略です。
 まずは、この4戦略を1つずつ説明してまいります。

タカ派戦略

 タカ派って言葉、皆さんどこかで聴いたことありませんでした?この言葉って実は政治や派閥の世界でよく使用される言葉なんです。「タカ派政治家〜派の○○××氏は…」なーんて感じの台詞、ニュースで時々耳にする台詞です。実はこの言葉の起源は進化ゲーム理論なんです。
 この言葉の起源はJ.メイナード=スミス氏という進化ゲーム理論の権威の著書
(2)に登場するタカ・ハトゲームなのですが、タカ・ハトゲームのタカとはそのままズバリ鳥類の鷹を意味し、そこではタカ派戦略とは、えさ場争いの際、「傷つくか相手が逃げ出すまで戦いを挑み続ける」戦略と記述されています。

 つまり、食料、土地などの資源を奪い合う際に相手を傷つけてでも資源を手に入れようとする戦略がタカ派戦略であるといえます。
 限られた水や食料などを巡って争っている動物もタカ派戦略を行っていると言えますし、その延長線上にある、動物の進化した人間が領土を巡って争う戦争もタカ派戦略であると言えます(事実政治用語では外交や軍事で戦争を支持し強硬な政策を主張する政治家やそのグループをタカ派と呼びならわしています)。

 恋愛におけるタカ派戦略の例を挙げると、この戦略は、よく青春スポーツ漫画に登場する戦略だと言えるでしょう。
 ヒロインが「この試合に勝った人と私は付き合う」等と賭けをして、ヒロインを手に入れるために、必死で戦いあう主人公とライバルなんて例があります。

 このとき、主人公とライバルは、相手を蹴落としてでも、自分がヒロインを射止めようと勝敗を競い合うのですが、この二人がとっている戦略を一般的なタカ派戦略だと呼ぶことが出来るでしょう。
 このようなタカ派戦略におけるゲーム理論は主に軍事や戦争などに於ける戦略研究として、これまで研究が行われています。

ハト派戦略

 進化ゲーム理論におけるハト派という用語もJ.メイナード=スミスのタカ・ハトゲームに起源を発していて、タカと同様、タカ・ハトゲームのハトも鳥類の鳩を意味し、ハト派戦略はえさ場争いの際に「まず誇示する。相手が戦いを挑めばただちに逃げ出す」との記述があります。
 タカ派戦略は資源(この場合の資源はえさです)に対する欲求が強く、そのため独り占めしようとして闘争という手段によって独占して資源を手に入れようとしますが、ハト派戦略はグループで争うことなく資源を手に入れようとするのがその戦略の特徴です(実際公園などでは鳩が喧嘩もせず、みんなで餌をついばんでいます)。

 このように争いを避けて皆で協調し、平等に資源を手に入れようとするのが進化ゲームとしての基本戦略です。
 ちなみにハト派という言葉も、タカ派と同様、政治用語としてよく使用される言葉です。タカ派が外交政策等に於いて、武力による解決を支持するのに対して、ハト派は対話による穏健な解決を支持するというのが、政治用語の概念です。
 一方恋愛シーンにおけるハト派戦略とは、彼氏(彼女)を友達(職場仲間、上司)に紹介してもらう、お見合いで結婚する、社員恋愛を行う、サークルの仲間だったのが恋愛に発展するなどが挙げられます。

 所属する、友人仲間、職場仲間、会社、サークル等内にて仲良くしながら、その中でみんなの協力と承認を得て、お付き合いを行うというのがその戦略として挙げられるでしょう。
 このような、人々が協力して資源を共に分かち合うハト派戦略におけるゲーム理論は、協力ゲームとしてこれまで研究が行われています。
 ちなみに男性は子供の時から対戦型のゲームやスポーツなど勝利という資源を巡るタカ派型のコミュニケーション遊戯をするのが多いのに対し、女性はおままごとや着せ替え人形、ぬいぐるみ遊びなどの協調型のコミュニケーション遊戯を行う傾向があります。
 これは、男性が無意識に対戦型コミュニケーションを選択することが多いのに対して女性が協調型コミュニケーション戦略を無意識により多く採用しているということになるのですが、これは実は男性と女性の生物学上の特質が要因なのです。それについては後の男性の戦略と女性の戦略の項にて述べるとしましょう。

ブルジョワ戦略

 タカ派戦略とハト派戦略は、これは動物界にも当然ながらよく見られる戦略パターンなのですが、今から説明するブルジョワ戦略、そして聖者戦略は人間のみが行っている高等な戦略です。
 J.メイナード=スミスによると、ブルジョワ戦略とは「所有者であればタカのように、侵入者であればハトのように振舞うものである」と記述がありますが、これは単純モデルの作成の際に用いた概念であるので、今回の分析に該当するとは言えません。
 そこで、ブルジョワ戦略を説明する最も簡単な言葉としては様々な経済行為があげられます。
 まず、資源を増加する行為として、お金を貸すという行為を例にしてみましょう。
 金を貸す人は金銭を他者に貸すという行為を行います。当然他者に貸すので、金を貸す人はその金銭を自由に使用することが出来ません。しかしながら、その金銭はそれでも自分の金銭であることには変化がありません。そして、その金銭を借りた人間は、その金銭を借りた人間に対してその利息を支払うために(それは定められた数パーセントの利息の場合もあり、「悪いことしてるな〜」という心理面での負債感である場合もあります)、金を貸す人はその所有を増やします。金を貸す人は、金を借りる人を助けるようでいて、結果としては金を借りる人から貸した以上の金銭を受け取るのです。それはつまり、金を借りる人は貸す人のために働いているようになってしまいます。  現代社会でこのロジックを把握しなければ、借金地獄などで損な人生になってしまいますので、気をつけてください(かなりいい事言ったぞと自己満足)。

 
この金を貸す借りるということを進化ゲーム理論として説明すると、ブルジョワ戦略とはお金(資源)を自分で使おうとはしないが、お金は欲しいので、その資源を得ようとする人間(借りる人間)から利益(この場合は利息)を入手し、資源を増やす(お金を増やす)戦略です。
  更に資源を増加する単純明快な行為としては資源を溜める(金銭の場合でいうなれば貯蓄)という行為があります。
 
様々な職業に就き、サービスを提供する代償として金銭(資源)を得る、いわゆる仕事もブルジョワ戦略に当たるでしょう。
  更に、資源を代償として自らがより必要とする資源と交換する(例えば金銭と引き換えに必要な商品を購入する)、いわゆる商業取引行為もブルジョワ戦略と言えるでしょう。
  このように資源を増やす或いは資源を代償としてより価値のある資源と交換するという主旨で行われる経済行為全般がブルジョワ戦略であるといえます。
  経済営為に於けるゲーム理論はゲーム理論研究で最先端の分野の1つであり、今や日本でも経済学ではゲーム理論の勉強はほぼ必須となっています。
 一方で男女の関係において言えば、例えばこういう方法で金持ちになった人間が、金を返せなくなった異性に肉体関係を要求する、なんてパターンは、1つのブルジョワ戦略と言えるでしょう。借金を返せなくなった女性が風俗に身売りされるなんてのも、実際にあるでしょう。
  逆に、金を払って異性と性的関係を持つ買春も、自らの金銭という資源を用いて、子孫を残すために必要な資源ともいうべき異性を手に入れようとするブルジョワ戦略だと言えそうです。
 以上に挙げた例は、金銭面での裕福さを前提としたパターンですが、そうでなくとも、例えば付き合うつもりはないが、異性の友達を多く確保しておくというのも、異性に対する欲求は制御するが、確保はしておくという意味で1つのブルジョワ戦略といえるでしょう。

聖者戦略

 聖者戦略は異性や資源に対する戦略を諦める代償として、それを狙う同性が取らざるを得ない戦略を回避し、利益を手にする戦略です。資源に対して一切の関心を示さない代償として手に入るのは、それ以外の地位や、名誉、そして自身の安全の保証です。なぜなら、異性や資源を巡る争いに巻き込まれる心配がないからです。
 
その代表であるのが宗教等における禁欲行為です。
 
例えばキリスト教や仏教などの宗教では、修道や苦行など性愛や食欲など様々な欲求を制限して他者の幸せを祈る宗教生活を送り、その清貧で潔白な行いにより、人々の尊敬(信仰)を受けます。
 自分が所有している財産などの資源を譲渡する行為も聖者戦略と言えるでしょう。 ちなみにボランティアなどの自らの利益を省みない利他行為も聖者戦略ということが出来ます。

 聖者戦略も人間のみが取りうる高等戦略と言ってよいでしょう。
 一方恋愛シーンでは、悲劇小説などのテーマとなる、愛している異性がいるけれども、その異性の幸せの為に自ら身を引くというような行為や、禁欲行為で説明した通り、そもそも最初から異性との交際を行わないという行為が挙げられます。

 

 御覧のようにマトリックスは、異性(資源)所有の欲求と異性(資源)に対する興味欲求という2つの欲求のプラスマイナスによってタカ派戦略、ハト派戦略、ブルジョワ戦略、聖者戦略の4つに分類することができるのです。
 所有の欲求とは、つまり対象が商品であれば欲しい、持っていたいという欲求、異性であれば一緒にいたい、付き合いたいといったような欲求です。

 興味欲求とは、商品であればその商品に魅力を感じるか、関心を持てるかということであり、異性でいうならば好きか嫌いかということです。
 
ちなみに、先ほど説明したように欲求の対象となっている異性とは、もちろん男性にとっては女性、女性にとっては男性のことで、人間が子孫を残していくために必要なパートナーを意味し、一方で資源とは人間が最低限生きていくために必要な水・食料・資材や燃料・土地から金銭などの資産や社会内での地位などをあらわします。 矢印の部分にある+と−の記号はそれぞれの欲求の方向を指し示しています。 
 異性(資源)所有の欲求が+方向に向いているとするならば、異性と一緒にいたい、付き合いたいというような欲求や商品を欲しい、持っていたいというように所有の欲求が昂進・解放されているということです。
  異性(資源)所有の欲求が−方向に向いているとするならば、異性であれば一緒にいたいとは思わない、付き合いたいけど我慢する、商品であれば、欲しいとは思わない、欲しいけど我慢するというように所有の欲求が減退・抑制されている状態です。
  異性(資源)に対する興味欲求が+方向に向いているとするならば、異性や資源に魅力を感じている、好きだ、関心があるというように興味の欲求が昂進・解放されている状態を指します。
 異性(資源)に対する興味欲求が−方向に向いているとするならば、異性が資源に魅力を感じていない、嫌いだ、関心がない、あるいは好きだという気持ちを抑える、関心を抑えるというように興味の欲求が減退・抑制された状態を表します。
  このように、4つの戦略は、2つの欲求のプラスマイナスの組み合わせにより、異性(資源)に対する興味欲求と所有欲求のベクトルが+であるタカ派戦略、興味欲求が+で所有欲求が−であるハト派戦略、興味欲求のベクトルが−で所有欲求のベクトルが+であるブルジョワ戦略、興味欲求と所有欲求のベクトルが共に−である聖者戦略に分類することができます。

一人が複数の戦略を使用しているとは?

 筆者は前書きで、1人の人間が複数の戦略を行使しうるという画期的な理論構築を行いましたと言いました。
 簡単に説明しますと、人間はタカ派、ハト派、ブルジョワ、聖者という4つの戦略のうちたった1つの戦略を行えるのではなく、やろうとすれば全ての戦略を行使しうるのです。
 つまりは、4つの戦略はケースバイケース、いつでも変更しうる相対的な戦略なんです。今からその例を具体的に説明しましょう。
  例えば格闘技を職業としている人がいるとしましょう。彼はテレビ等のメディアに放送される時はベルト等をかけて常に闘っていますが(タカ派戦略)、かといって彼は誰でも彼でも手当たり次第に襲っているわけではありません(もちろんそんなことをすれば、すぐに警察に捕まってしまいます)。そうやって闘うのはそれを愉しみにする観客達から収入を得るためにやっていることであり(ブルジョワ戦略)、当然友人や家族と会うときはにこやかに笑顔を交わしますし(ハト派)、ボランティアなどの無償行為を行っているかもしれません(聖者戦略)。
  一方でいつもニコニコ優しい青年だって常に全員と協調(ハト派戦略)しているわけでもなく、時にはアルバイトをしたり(ブルジョワ戦略)喧嘩をふっかけてきたり、襲い掛かって来るような暴漢がいれば闘うでしょう(タカ派戦略)。
 ワーカホリックで金のことしか考えていないような人だって(ブルジョワ戦略)、時には家族や友人と団欒の時を過ごす(ハト派戦略)ことだってあるでしょう。
 様々な宗教の司祭や高僧(聖者戦略)にしても、資源や異性に対する欲求が無いわけじゃありません。それを如実に表しているのが、よくニュースや週刊誌に報道される宗教手段の教祖が脱税して多額の金を貯め込んだり、多数の女性信者とSEXするという事件が起きることもあります。これはまさに聖者戦略を行使している人間が必ずしも聖者戦略だけを行うとは限らないことを如実にあらわしているのです。

(1)『進化ゲームとその展開』(共立出版)における『所有と分配―共同分配規範の社会的発生基盤に関する進化ゲーム分析』(竹澤正哲氏・亀田達也氏)で共同分配における4つの戦略が示されている。この4戦略の分類は獲得者、非獲得者の場合における所有権の主張と容認という要素から4つの分配における行為戦略を導いており、そのアイデアとしても、あらたに聖者という戦略を提示したという点でも非常に優れている。桃井富範による今回の研究における4つの戦略は共同分配の4戦略を参考にした上で、共同分配における4戦略を人間行為の因果関係における果(行為としての結果)の戦略行為であると捉え、人間行為における因(行為のファクター)としての4戦略を進化ゲーム理論を創始したJ.メイナード=スミス氏の研究を参考とし、提示している。研究が、いや全ての営みが先人の功績に依るところが多く今研究も『竹澤正哲氏・亀田達也氏の所有と分配におけるアウトプットとしての人間行為の4形態とJ.メイナード=スミス氏の戦略定義との統合を行った人間行為のファクター研究』と称するのが正式であるが支障を来すことが推量されるので諸氏を敬しつつも『人生に役立つゲーム理論』と略称する。

(2)『進化とゲーム理論―闘争の論理』(産業図書)
          

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